【 佐藤さんの場合 】
作者:てっそ

<概要>
 プッシュされてるけどそういう関係にはなりたくない系女子

<登場人物>
・佐藤 遥 さとう はるか(21/♀)
 ノリはわりといいがサバサバしてて、タンパク

・中村 理 なかむら さとし(19/♂)
 まったりおっとりスローペース

・向井 友美 むかい ともみ(20/♀)
 中村のファン

・甲野 愛実 こうの あいみ(20/♀)
 中村のファン

<配役>
 佐藤 遥♀:
 中村 理♂:
 向井 友美♀:
 甲野 愛実♀:



○大学、食堂
昼時で混んでいる。
佐藤遥(21)、食堂で本を読みながらAランチを食べている。
中村理(19)カレーを持って遥のところに来る。
001 中村「さとーさん、ここいい?」
002 遥「んー」
003 中村「何読んでるの」
004 遥「ラノベだよ」
005 中村「『踏まれたいコメカミ』…? どんな話?」
006 遥「タイトルからいって主人公がドMな話かと思ったんだけど、今のところそんな事なくて萎えてるなう」
007 中村「そんなの期待してたの」
008 遥「『僕のコメカミを踏んで下さいお願いします』みたいな事を懇願するのを期待してたんだけどね。わりと普通」
009 中村「そっかぁ。いただきます」
中村、カレーを食べ始める。
遥、本を閉じて横に置いておく。
010 遥「今日はまだ授業あるの?」
011 中村「3限にスペイン語があったんだけど、なくなったー」
笑いながら、
012 遥「スペイン語なんてとってんの?」
013 中村「情熱的でしょ?」
ヘラッと笑う中村。
014 遥「万年寝起きが何言ってんだか」
015 中村「ひどいなぁ。さとーさんは万年タンパクなくせに」
016 遥「何か言った?」
017 中村「ううん」
018 遥「ご馳走様でした」
019 中村「さとーさん午後からなにあるの」
020 遥「今日はもうおしまい。今から図書室行こうかなって」
021 中村「じゃあ僕も行く」
向井友美(20)と甲野愛実(20)、中村のところに来る。
022 友美「あの、中村くんですよね」
023 中村「そうですけど」
友美と愛実、黄色い声を上げてはしゃぐ。
024 愛実「あの、私達中村さんのファンなんです」
025 友美「携帯番号教えてもらえませんか」
026 中村「え、いきなりそういうのは」
027 友美「お願いします」
028 愛実「他の人に教えたりしませんから」
029 中村「ちょっと無理かなぁ」
030 愛実「そこをなんとか〜」
031 友美「お願いしますっ」
イラつきながら、
032 遥「アンタ達さぁ、ピーギャスピーギャス煩くて耳が腐りそうなんだけど」
033 愛実「はぁ? なんなのよアンタ」
034 友美「あたしたちは今中村くんと話してるんだから」
035 遥「あーやっぱり見た目通り頭悪いみたい。人間の言葉理解出来る?」
036 友美「なんですって。大体なんでアンタみたいな人が中村くんと一緒にいるのよ」
037 中村「はいはい喧嘩しないでね。携帯は教えられないけど、良かったらまた声かけてね。それじゃ」
遥の背中を押してその場を去る。
友美と愛美、後ろでキャーキャー言ってる。
038 遥「ったく」
039 中村「珍しいね、さとーさんがあんなこと言うなんて」
040 遥「うるさいんだもん」
041 中村「ふぅん」
トレーを返却口に返しながら、
042 遥「なによ」
043 中村「ううん。コーヒーでも飲みに行かない?」
044 遥「奢ってくれるなら」
045 中村「決定」
046 遥「カフェモカ、グランテね」
047 中村「そんなに飲めるの?」
048 遥「飲む」
○カフェ
049 中村、コーヒーを持ってくる。
050 中村「お待ちどうさま」
051 遥「ありがと。いただきます」
一口飲んで、一息つく。
052 遥「おいし」
嬉しそうに、
053 中村「さとーさんってさぁ、美味しそうに飲むよね」
054 遥「そう? 普通だよ」
055 中村「見てると癒される」
興味なさそうに、
056 遥「あそう」
057 中村「さとーさんって隅っこ好きなの?」
058 遥「え、どうして?」
059 中村「大抵奥の隅っこの方の席に座るから」
060 遥「あー…言われてみればそうかも」
061 中村「気づいてなかったんだ?」
062 遥「うん、特に意識はしたことない」
063 中村「そっかぁ」
と、少し嬉しそう。
064 遥「中村はああいう事よくあるの?」
065 中村「ああいう事って?」
066 遥「知らない人に番号聞かれたり」
067 中村「うーん、どうかなぁ。たまにかな?」
068 遥「ふーん」
069 中村「気になる?」
ふいっと顔を背けて、
070 遥「…そういうわけじゃないけど」
071 中村「けど?」
072 遥「ちょっとどうなのかなって思っただけ。深い意味ないんだから突っ込むな」
073 中村「なんだ、残念」
074 遥「残念ってなんだよ」
075 中村「言葉通りの意味だよ?」
076 遥「深い意味があったら、あたしが中村のこと好きみたいじゃん」
077 中村「好きじゃないんだ…」
078 遥「いや、好きじゃなくはないけど、友達としてというか」
079 中村「僕はさとーさんの事好きだよ?」
と、満面の笑み。
080 遥「…またそういう冗談を」
081 中村「冗談じゃないよ?」
082 遥「色んな子にそんなんしてるからいきなり番号聞かれたりするんじゃないの?」
083 中村「やだなぁ、さとーさんにしかしてないよ」
084 遥「はいはい」
085 中村「また信じてない」
086 遥「中村の言動は信用に足らん」
087 中村「ひどいなぁ」
088 遥「いつもホントかウソか分からない事ばっかり言う方が悪い」
089 中村「さとーさんにはホントの事しか言ってないのに。どうして僕の愛を受け取ってくれないかなぁ?」
090 遥「もういいってばっ」
中村、クスクス笑ってる。
091 遥「またそうやってからかう」
092 中村「だって面白いから」
093 遥「くそぅ…もう帰る」
と、席を立つ。
帰る遥の背中に、
094 中村「じゃあまた明日」
095 遥「しらん」
カフェを出てツカツカと早歩き。
096 遥「ったく、『愛を受け取ってくれない』とかバカじゃないの。………ばーか」
-end-
(C)薄雲鼠