【 さくらもち家 〜将来の夢〜 】
作者:てっそ

<概要> 人はないものに憧れるものです。


<登場人物>
 ・さくらもち父
  優しくておっとりしてる。
  標準語。
  若いころは結構やんちゃだった。

 ・さくらもち兄
  人間にすると11歳くらい。
  関西弁。
  一人称は俺。
  背伸びしたいお年頃。

 ・さくらもち弟
  人間にすると9歳くらい。
  喋り方がちょっとアホの子?
  関西弁。
  一人称はわし。
  匂いに敏感。


<配役>
 父:
 兄:
 弟:



○原っぱ
家族みんなで日向ぼっこ中。
子供は二人とも、横になってる父に凭れてまったりしてる。
001 弟「なぁなぁ兄ちゃん?」
002 兄「なんやー」
003 弟「あんなー、相談があるんやけど〜」
004 兄「珍しいな、どうしたん?」
005 弟「実はなぁ? ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あかん、やっぱり言えへんわ」
006 兄「ハッキリせーやー。うっとーしーなー」
と、口調はまったりのまま返す兄。
007 弟「うーん………笑わへん?」
008 兄「内容による」
009 弟「じゃあやっぱり言うのやめるわー」
010 兄「なんやそれー。笑わへんから言うてみー?」
011 弟「あんなー、わしーな?」
012 兄「うんー」
013 弟「実はー・・・・・・・・・・柏餅になりたいねん」
014 兄「は?!」
と、起き上がって弟を見る。
015 弟「だから、柏餅になりたいねん」
016 兄「何言うてるん自分。無理に決まってるやろ」
017 弟「やっぱり無理かなー?」
018 兄「そらそうやろ。っていうか柏餅なんて葉っぱの匂いがついた餅やないか」
019 弟「そんなことあらへん!(恍惚とした表情で)あの真白でつやつやしたお肌…ほのかに香るあの柏の香り…。ハァ……なりたいなぁ、柏餅…」
兄、ペチンと頭を叩く
020 兄「しっかりしぃや!お前、こんな事父ちゃんに聞かれたらどーするんや」
021 弟「大丈夫や、父ちゃん寝てるし。1回寝たら中々起きないし」
兄、そーっと後ろを見て寝てるのを確認する。
022 兄「まぁ…そうやけど」
023 弟「なぁなぁ兄ちゃん、なんとかして柏餅になれへんかなぁ?」
024 兄「お前そんなんアレやで。ウチの子やなくなってまうで?」
025 弟「あーそっかぁ」
026 兄「父ちゃん悲しむでー?」
027 弟「悲しむかなぁ…?」
028 兄「当り前やろ。昔俺が「ふ饅頭になりたい」言うた時なんてメッチャ大変やったで?」
029 弟「え、兄ちゃんふ饅頭なんかになりたかったん?」
030 兄「今『なんか』言うたか?! 『ふ饅頭なんか』言うたんか!!!」
口を両方から引っ張る。
031 弟「いふぁい、いふぁいふぉふぃーふぁん(痛い、痛いよ兄ちゃん)」
032 兄「お前はふ饅頭の良さを全くわかってへんな」
033 弟「だって黄ばんでるやん…」
034 兄「あほいえ! あの赤ちゃんのように柔らかい肌をお前は知らんのんか!」
035 弟「しらーん。近所におらんもん」
036 父「ふ饅頭さんとはちょっと離れてるからなぁ」
037 弟「父ちゃん?!」
038 兄「起きとったん?!」
039 父「お前(弟)、柏餅になりたいのかい?」
040 弟「…そうや」
041 父「そうか……」
042 弟「わしが柏餅んなったら、父ちゃん悲しむ?」
043 父「そうだなぁ。もしお前が柏餅になったら、一緒に入れなくなってしまうからねぇ」
044 弟「せやんなぁ…」
045 父「お前は(兄)今でもまだふ饅頭になりたいのかい?」
046 兄「おっ、俺は別にもう…」
047 父「ふふふ、父さんに似て嘘が下手くそだな」
048 兄「そんなことあらへん!」
049 父「実は父さんもねぇ、今のお前たちみたいに憧れていた事があったんだよ?」
050 弟「えー!? そうなん?!」
051 父「あぁ。だから気持ちが分からないわけじゃないんだ」
052 兄「父ちゃんは何になりたかったん?」
053 父「…ふふ、懐かしいなぁ。父さんはね、バームクーヘンになりたかったんだ」
054 兄/弟「えーーーーーーーー!!」
055 兄「父ちゃんそらあかんわ!」
056 弟「父ちゃん舶来品になりたかったんか!!! かっちょええなぁ!」
057 父「こう見えても、色んなところに修行しに行ったりもしたんだよ」
058 弟「修行もしたんか! でも父ちゃんはなんで桜餅のままなん?」
059 父「父さんな、修行して分かったんだ。」
060 弟「なになに?!」
061 父「僕たち桜餅はね…(冷めたトーンで)桜餅以外にはなれないんだよ」
-end-
←戻る



(C)薄雲鼠